保育士のための「働き方改革」って?~堀昌浩氏 スペシャル・インタビュー

堀昌浩先生
最近、毎日のようにニュースでも話題になっている「働き方改革」。企業や役所に勤める人たちだけの話だと思っている保育士さんが多いかも知れませんが、決してそうではありません!
保育士さんのための働き方改革を推進しようと様々な活動をされている、社会福祉法人日本保育協会評議員・認定こども園さくら園長の堀昌浩先生に、保育園・保育士のための働き方改革を解説していただきました。
(2018.2.27)
–国会でも働き方改革についての激論が交わされている中ですが、保育界にも働き方改革の波がやってくるのでしょうか?
働き方改革におけるこれまでの議論では、いわゆるホワイトカラーと呼ばれる頭脳労働主体の仕事、もしくはブルーカラーと呼ばれる肉体労働主体の仕事のどちらかに分類して語られることが多かったように思います。ところが、保育園での保育士さんの仕事というのは、そのどちらでもない。私は保育の仕事というのは言うなれば「感情労働的な仕事」ではないかと考えています。
感情労働的な仕事では、他の先生たちが今何をやっていて、これからどんなことをやろうとしているのかを常に意識して、チームとして働くスキルが求められます。今日の行動予定をタスクとして共有しているだけでは不十分で、先生同士の心の中が見える化された状態を作り出さなければいけません。そしてもちろん、子どもたちの意思や気持ちを中心に据えて行動することになるので、更にそのバランス感覚には高度なものが求められます。
このように保育の仕事は、他の職業にはない部分が多いため、近年企業で進められている働き方改革のやり方では通用しづらいと思います。また小学校や中学校の職場環境をモデルにすると、改革そのものが出来ないと思います。要するに、参考にすべき型のようなものが存在しないことが一番の課題だと言えます。
–「感情労働」である保育士さんの働き方改革には、「心の中の見える化」が必要なのですね。それでは働き方改革に取り組みたい保育園は具体的にどうすればよいのでしょうか?
私の園では約7年前から働き方改革を推進しています。働き方改革というと、勤務時間や休暇取得といった労働条件面の改善ばかりがイメージされがちですが、実際には「会議のあり方を変える」というような日常的なレベルでの業務のテコ入れが中心です。まずはそういった細かい取組みの積み重ねによって園内のチーム体制を整える。その上で労働条件を整えなければ意味がないでしょう。求人票で見る労働条件は良いにも関わらず、実際に転職してみると「こんなはずじゃなかった」とギャップを感じる保育士さんが多いのもこういった背景があると感じています。制度や条件だけでは働きやすさを作り出すことはできないのです。
そこで、私は園内で行う会議を次の3種類に分けることにしました。
1つ目は、保育理念を保育者一人ひとりに浸透させるための時間。私の名前が「昌浩」なので「まさひろ保育塾」と呼ばれています。
2つ目は、保育中に撮った写真を見ながら担任の保育者が保育内容を考えたり計画を立てたりする時間。
3つ目は、何か課題があったときにそれを解決するために集まって議論する時間。
それ以外の情報共有の時間は、あえて「伝達会議」というネーミングで、前出の3つとは分けて考えています。この「伝達」という単語からも分かるとおり、トップダウン的に伝わればよいことについては、必要以上に時間を費やしたくないという意図があります。例えば園内行事のテーマなど、既に決定したことを周知するだけなので、議論の必要がありません。こうすることで、時間の無駄を省くようにしています。
このような新しい会議のあり方を作り、上手く使いこなせるまで浸透させることで、きちんと情報共有が出来るだけでなく、保育士さん同士の意思疎通が豊かになります。これが「心の中の見える化」に繋がってくるわけです。余計な時間を割かなくなれば、本人のやりたい仕事に時間とエネルギーを注ぐことができるようになります。
こういった組織改革が進めば、研修や休暇といった自分を高める時間が、保育の質を高める意識へとつながり、時短勤務やパート形態で働きたいという保育士さんも受け入れ易くなります。ここで初めて、世間一般で言われるところの働き方改革と同じステージに立てるのではないでしょうか。
–保育園での会議や情報共有の見直しが、結果的には保育士さんの働き方改革に繋がってくるのですね。それでは、働き方改革が進んだ園では保育士さんはどう変わっていくのでしょうか?
働き方改革が進むことによって、保育士としての考え方がガラリと変わるでしょう。保育という仕事を通して、自分が「やりたい」と思っていることを実現しやすくなるからです。
保育園で働く保育士さんの実に7割が「保育士さんになることが子どもの頃からの夢でした!」と語ります。つまり、就職・転職で夢を叶えているのです。それなのに、いざ働き始めたら「こんなはずじゃなかった」と職場を去る保育士さんも世間的には多く、だれもが「自己実現ができる職場環境」とは言いにくいのが現状かもしれません。
それでも、早くから働き方改革に取り組んできた私の園では、以前よりも「こんな遊びをやってみたい」と保育士さんが主体的に提案してきてくれることが増えましたし、保育士さんごとに違ったカラーを持った賑やかで楽しい園になってきたと思います。明らかに「何をすればいいですか?」と聞かれることは無くなりましたね。
夢を叶えて保育士になった人が、就職後も仕事を通じてどんどん自己実現をして、その姿を子どもたちに見せていくことも保育士としての生き方であり、働き方改革そのものなのではないでしょうか?
<堀 昌浩先生プロフィール>
認定こども園さくら 園長 / 社会福祉法人日本保育協会 評議員 / 一般社団法人Learning journey 代表理事
全国の保育関係者から注目される先進園の園長として、保育の現場に立ちながら日々より良い保育を研究。代表をつとめる(社)Learning journeyでは、非認知能力に代表される「これからの時代を生き抜く子どもたちに必要な力」を育むための保育者創造を推進している。
栃木県「認定こども園さくら」「さくら第2保育園」
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